チョコ泥棒とは...
いつからか、沖縄市を拠点に、同級生3人で ダラダラと活動する(はずの)劇団です。

(5)奈良

2013年03月21日

良といえばやっぱり大仏だ。大仏の数は県民の携帯電話の所有台数を超えているという報告もあるほど、奈良県民は大仏を愛している。そしてさらに素晴らしいことに、地味だ。そしてこの地味さをゴリ押ししてくる空気感が、なんとも心地が良い。奈良は人口約140万人のうち8割が大仏と鹿で占められているが、残りの2割の県民は自らが暮らす地の地味さを隅から隅まで知り尽くし、そしてそれを誇る。スカイツリーがなんだ! 青い海がなんだ! こっちには鹿と大仏がいる!


 そして近年奈良県民は、『せんとくん』という怪物を生み出した。これが、県民の奈良への誇りをさらに押し上げた。このせんとくん、見るからに奇妙なビジュアルをしている。幼子なら見た瞬間に背筋を凍らせることは間違いない。それほど恐ろしい。この古都・奈良に、大仏様から角を生やさせた悪霊みたいなルックスのマスコットが出現しても、陰陽師部隊が出動しないのは疑問である。なぜ退治しない。坂口安吾の小説のなかで耳男が作り上げた怪物(のような菩薩)が実写化されたのではないかと思えた。小説の中の怪物は、疫病から人民を救ったとして祀られるのだが、奈良県民もとうとうせんとくんを県の観光マスコットにしてしまった。ああ、奈良に不穏なことが起きませんように。


 そういえばこのせんとくん、制作費が1,000万円以上かかったのだという。耳を疑った。どこにそんな大金を投じた形跡があるのか。もしかしたら、本物の大仏に本物の鹿の角をぶっ刺したのではないかとも思えてしまうのだが、さすがにそこまで仏様を冒涜するようなことはしないだろう。それから、実はせんとくんには、「まんとくん」というライバルがいる。せんとくんとまんとくんを比べてみると、圧倒的にまんとくんの方が可愛いのだ。これもう、言葉を失ってしまう程の大差である。大金を投じた挙げ句、可愛さではライバルに絶対に追いつけない。なんと物悲しいせんとくん。奈良県としても、デザイン案が上がってきた時から、薄々これはヤバいと感じていたのではないだろうか。しかし、もうかなり計画進んじゃったしこれでなんとかしよう! といらぬ粘りを見せ、サンク・コストをどんどん増大させていった。そうして、あの怪物が生み出されてしまった。これがせんとくん誕生の真相じゃなかろうかと思う。


 しかし、結果的にせんとくんは大成功を収めた。先述したが、いまでは県の観光マスコットだ。この気持ち悪さを、日本中のマスメディアが放っておかなかったのだ。平城遷都1300年記念という神聖さとあのルックスの気持ち悪さというギャップ。確かにこれは猾い。スーザン・ボイルの典型的なおばさんスタイルであの歌唱力というギャップが人々を惹き付けたのも、同じことなんだろう。いろいろ反対されたが、終わってみれば合計約15億円の経済効果を生み出したというのだから、やはりせんとくんには神聖なる力が宿っているのだ。

(奈良県の皆さん、ごめんなさい)

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↓ せんとくん(上)&まんとくん(下)






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Posted by チョコ泥棒 at 07:23│Comments(0)ハダ色の日々しりとり
 
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